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店を増やすのは、舞台を増やすこと。

「また新しい店を出すらしい」。飲食の現場で長く働いてきた人ほど、その言葉を素直には喜べないかもしれません。

出店が決まり、求人を出します。けれど人はすぐには集まりません。オープン日は動かせないから、既存店から人を引き抜きます。ベテランが薄く引き伸ばされ、新人の教育は後回しになり、現場の余裕が少しずつ削られていきます。気づけば、誰もがどこかで無理をしている。拡大とは、たいてい誰かの負担の上に成り立っている──そう感じてきた人は、少なくないはずです。

エルファーストも、店を増やしています。高級個室焼肉LAMP、ニクノトモシビ、ギュータンベロンチョ。群馬県伊勢崎市という一つの街で、業態も価格帯もまったく違う三つのブランドを並べて育ててきました。そして、これからも増やしていきます。ただ、その増やし方には、世間で言う拡大とは逆を向いた理屈があります。

店を増やすことと、舞台を増やすこと

エルファーストにとって大きくなるとは、働く仲間が立てる舞台を増やすことです。

店を増やすことと、舞台を増やすこと。この二つが、エルファーストの中では同じ意味を持っています。なぜ、そう言い切れるのでしょうか。話は創業よりもさらに前──一人の少年の食卓まで、さかのぼる必要があります。

一人の少年の食卓から

代表取締役社長 石田剛大
代表取締役社長 石田剛大

創業者であり代表取締役社長の石田剛大が「食」の力を最初に知ったのは、祖母の料理でした。特別なごちそうではありません。毎日当たり前のように出てきた、普通の料理です。けれど大人になってから気づきます。あの一皿一皿が、どれだけ自分の心を支えていたかを。食卓にある一皿が、誰かの一日を、その先の人生を、少しだけ豊かにする。その実感が、エルファーストの原点になりました。「セカイに、希望と感動を」という企業理念は、この実感から生まれています。

ところが、いざ飲食業界に身を置くと、現実は理想とかけ離れていました。

朝は仕込みのために誰より早く店に入り、夜は最後のお客様を見送ってから片づけ、翌日の準備をします。気づけば終電はとうに過ぎています。それだけ働いても、給料はなかなか上がりません。何年たっても役割は変わらず、来年もこの場所で同じことをしている自分しか思い描けません。長時間労働、低い賃金、先の見えないキャリア。「好きで選んだ仕事なんだから」という根性論が、当たり前のように現場を支配していました。

料理は、人を幸せにする仕事のはずです。それなのに、その料理をつくる人自身が、静かにすり減っていく。この矛盾はおかしい、と石田は考えました。そして、ただ嘆くのではなく、変えると決めたのです。そこから生まれたのが「飲食業を、誇れる仕事に変えていく」という意志でした。

「誇れる仕事」とは何でしょうか

標語にすれば一行で済みます。けれど本気でやろうとすると、これはかなり重い宿題になります。

誇れる仕事とは、胸を張れる仕事のことです。家族に、友人に、自分自身に対して、「この仕事を選んでよかった」と言えること。そう言えるためには、働きに見合った正当な評価がいります。納得できる報酬がいります。そして何より、この先、自分はどうなれるのか──その道筋が、ちゃんと見えていなければなりません。

人が仕事に誇りを失うのは、給料の額だけが理由ではありません。「ここで何年がんばっても、自分はこのままなのではないか」。その出口の見えなさが、いちばん人をすり減らせます。やりがいは、今日の充実だけでは続きません。明日へ、来年へ、その先へと続く道が見えているとき、はじめて人は長く走れます。

だからエルファーストは、次のポジションを具体的に用意することにこだわります。店長になる。独立して、自分の店を持つ。新しいブランドの立ち上げメンバーに加わる。「いつか」という曖昧な約束ではなく、現実の選択肢として、その舞台が目の前にあること。それを何より大切にしています。

舞台は、空からは降ってきません

ここに、先ほどの一文がつながります。

舞台は、空からは降ってきません。店長の椅子は、店があってはじめて存在します。独立のノウハウは、いくつもの店を立ち上げてきた会社にしか蓄積されません。新しいブランドは、挑戦できる体力のある組織からしか生まれません。

つまりエルファーストにとって、店舗数を増やすことは目的ではなく、手段です。仲間一人ひとりに次の舞台を渡し続けるために、会社は大きくなり続ける必要があります。順番が、ふつうの拡大思考とは反対なのです。先に売上目標があって、それを埋めるために人を採るのではありません。先に、成長していく仲間がいて、その人たちが立つ場所として、店をつくります。

具体的に想像してみてください。ある人が、一つのブランドのホールスタッフとして入社します。仕事を覚え、後輩を育て、やがて店長として一店舗をあずかります。次は、まったく業態の違うブランドの立ち上げに、店長として加わります。そこで培った経験を持って、独立する道もあります。新しいブランドそのものを構想する側へ回る道もあります。こうした歩き方が、絵に描いた理想ではなく、現実に選べる道として存在していること。それが、舞台が複数あるということの本当の意味です。

三つのブランドは、三つの輝き方です

三つのブランドを、あえて別々の顔で育てているのも、同じ理屈で説明がつきます。

落ち着いた個室で、A5和牛とじっくり向き合う高級個室焼肉LAMP。A5国産和牛100%のパティを炭火で焼き上げ、毎日でも通いたくなる定食として届けるニクノトモシビ。極厚牛タンという一点で勝負するギュータンベロンチョ。お客様から見れば、それは「気分やシーンで選べる楽しさ」です。けれど働く側から見ると、まったく別の意味を持ちます。自分はどの舞台で力を発揮したいのか──それを選べる、ということです。

接客の所作で空間を仕立てたい人がいます。炭の前に立ち、火と向き合う時間に喜びを感じる人がいます。一つの素材を極めることに燃える人もいます。一つの型しか持たない会社では、その型に合う人しか輝けません。ブランドが複数あるとは、輝き方の選択肢が複数ある、ということです。

経歴より、志を見る

エルファーストの人事理念には「経歴より志を見る」という一節があります。今この瞬間のスキルや肩書きではなく、「この人はどこまで伸びたいと思っているか」を見ます。そして「夢を語れる職場が、最強のチームをつくる」という言葉どおり、夢を堂々と語れる空気を、何より大切にしています。店長になりたい。独立したい。新しいブランドをやってみたい。その夢の数だけ、会社は舞台を用意しようとします。

社訓の一つに「一人の成長が、チーム全員を強くする」という言葉があります。強い人だけが生き残る組織ではなく、一人も置いていかずに、全員で頂点を目指す。それが、この会社の選んだ姿勢です。

エルファースト合同忘年会の様子
ブランドを越えて集まる、エルファーストの仲間たち

五十店舗は、五十人ぶんの店長の椅子です

エルファーストは、10年後に50店舗以上、1,000名を超える仲間と働く会社を目指しています。

数字だけを並べれば、よくある拡大計画に見えるかもしれません。けれど、その中身を見てください。五十という店舗数は、五十人ぶんの店長の椅子です。千名という仲間の数は、店長を、独立を、新ブランドへの挑戦を思い描く、千通りのキャリアです。会社の成長曲線は、そのまま、そこで働く一人ひとりの可能性の総和でもあります。

だから、エルファーストが大きくなるとき、それはいつも、誰かのキャリアが一段上がるときです。会社が伸びることと、そこで働く一人が伸びることが、矛盾なく、同じ方向に重なっています。拡大が誰かの負担になるのではなく、拡大が誰かの可能性になる。その順番をつくれているかどうか。それが、ふつうの「大きくなる会社」と、エルファーストとの違いです。

店を増やすのは、舞台を増やすこと。それが、この会社が増え続ける、本当の理由です。